アメリカン・バレエ・シアター 
「海賊」( Le Corsaire )


98年6月20日(土) 8:00PM〜
ニューヨーク、メトロポリタン・オペラ・ハウス
振付 = コンスタンティン・セルゲイエフ、原振付マリウス・プティパ
     ( Konstantin Sergeyev after Marius Petipa )
音楽 = アドルフ・アダン他(Adolphe Adam etc. )

メドーラ = ジュリー・ケント( Julie Kent )
コンラッド = ホセ・マニュエル・カレーニョ( Jose Manuel Carre
ño )


 ケントのメドーラも、華やかだった。輿に載っての登場では、アナニアシヴィリは、ちらりとベールをコンラッドの方に上げただけだったが、ケントは輿が一番前で止まる時、両手でさらっとベールを上げ、オペラハウスの天井を仰ぎ見るような印象的なしぐさを見せた。アナニアシヴィリが牡丹や芙蓉の花ならば、ケントはピンクのバラのようだ。
 しかし、太守をからかうところなどは、お茶目でかわいかったアナニアシヴィリに対し、逆にケントの方が健康的なお色気が漂う。 
 二幕のパ・ド・トロワもコンラッドとのアクロバティックなリフトも難無くこなし、とても素晴しかった。

 メドーラの衣装は、前夜のアナニアシヴィリとことごとく違っていた。ケントの方が、他のダンサーの衣装とコーディネイトされていたので、このカンパニーのものなのだろう。

 カレーニョとピコーネは昨夜と役を入れ替えての登場。

 ピコーネは、肌の色を浅黒く塗り、ワイルドな奴隷姿。今日の見せ場、パ・ド・トロワでは、お得意の跳躍がさらに見事でした。彼が跳ぶ度に地鳴りのようなざわめきや感嘆が沸き起こる。三回連続して跳ぶと、「ゴゴー」「ゴゴー」「ゴゴー」という状態だった。私も一緒になって、「うわあ〜」とか言っていたかもしれない。

 しかし、この夜、目についたのは、着地から次のジャンプに移るまでのバタバタした感じ。彼はそこが不細工。カレーニョはどの時点でも完璧で美しかったが、ピコーネは空中に賭けているのだろうか? トータルで見れば、カレーニョのアリの方が優れている気がするが、ピコーネの存在感は侮れないものがある。

 この夜コンラッドを踊ったカレーニョは、ピコーネに押され気味に見えた。パ・ド・トロワ(主にケント/ピコーネ)で、会場がすごい熱気に包まれてしまったので、その後にくるソロを、彼はおとなしく踊っていた。跳躍の高さも、前の夜に比べておさえていたようだ。ピコーネの、高さもあり美しくもある華麗な跳躍が、あれほど観客にうけてしまった後では、体格の劣るカレーニョが跳び比べをしても仕方がない。彼は冷静だったし、賢明だったと思う。

 ギュルナールはパロマ・ヘレーラ。前回見たジュリエットでは感じなかったが、今回は華がある人だな、と痛感する。タトルの方がきっちり丁寧に踊っていたけれど、ヘレーラはスターの輝きをすでに身につけていて、何をしても印象に残る気がした。

 幕が上がる直前に、ランケンデム役の変更がマイク放送された。マラーホフの代りに踊ったのは、キース・ロバーツ。特筆すべき点はなかった。

 今晩のビルバントは、コール・ドのジョン・セルヤ。コレーラよりは髭が似合っていて、海賊らしかった。この人は、コール・ドのメンバーなのだが、振付もする。去年の秋のシーズンには、ヘレーラが彼の新作を披露していたし、今年の秋シーズンにも、また新作を発表するそうだ。

 三人のオダリスク達(メンバーは一緒)は今日も大健闘。やはり、昨夜と同じく拍手が鳴りやまない状態。「今日こそは、次の音楽よ、始まるな!」と指揮者に念力を送ったが、それも空しく、数小節後には観客の方があきらめざるをえなかった。

 カーテン・コールでのピコーネは、両手を高く上げて長い間立ち尽くし、すでにスターの風格。彼に捧げられたもの凄い拍手は、主役へのそれを凌いでいたかも。何回目かの時、彼はカーテンの向こうから放物線を描きながら出てきて(またこれが高いのだ)、観客の興奮に油をそそぐサービスぶり。
 そして、その次に出てきたセルヤは、銃で撃たれた胸を押さえながら、よろめくように出てきて、さらにサービス。お祭りのように楽しかった。



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