アメリカン・バレエ・シアター 



98年11月7日(土) 2:00PM〜
ニューヨーク、シティ・センター



I.「4人のためのヴァリエーション」( Variation For Four )

振付 = アントン・ドーリン( Anton Dolin )
音楽 = マルグリーテ・キオフ( Marguerite Keogh )

ジュゼッペ・ピコーネ( Giuseppe Picone )
ホセ・マニュエル・カレーニョ( Jose Manuel Carre
ño )
イーサン・スティーフェル( Ethan Stiefel )
マキシム・ベロチェルコフスキー( Maxim Belotserkovsky )

 音楽といい、衣装(光りものをつけてわりとゴージャス)といい、男性ばかりの踊りにしては優雅な雰囲気。
 全員で踊る時は、舞台に向かって左前がピコーネ、右前がカレーニョ、左後ろにスティーフェル、右後ろにベロチェルコフスキーという配置。
 この演目で、一番印象に残ったのは、スティーフェル。彼の跳躍が軽いのは前から知っていたが、この日は強く再認識させられた。花びらか羽根のようにマラーホフが跳ぶのは有名だが、スティーフェルはそれ以上ではないかとさえ思う。彼の跳躍に、「ひらり」という擬態語は重過ぎるほどだ。彼のヴァリエーションには、空中で膝を曲げる(つまり足の形が<>の形になる。何という技なのでしょうか?)跳躍がいくつかあったのだが、その度に空気に引っ張られるように空中に舞い上がり、音も無く舞台に降りてくるのだった。観客全員が、リリアナの踊りを見た聖真澄状態になっていたことは、想像に難くない。(あれだったら、ジゼルもシルフィードも踊れるぞ。顔もかわいいことだし、何かの時にはぜひトライを…)
 ラスト近く、4人全員で、グラン・ピルエット・ア・ラ・スゴンドをする時は豪華。また、それぞれの持ち味がうかがえて面白かった。
 カレーニョはそれほど速く回転しないが、軸はずっと真っ直ぐで足先から手先まで美しく品格を感じさせるし、ピコーネの回転は非常に情熱的で華やかだけど、所々粗雑。(特に、横でカレーニョが回っているので目立ってしまう) スティーフェルは最も軽やかに速く回転していて、敏捷さをアピール。その中で、優雅なプリンスラインを保ちながらも、ベロチェルコフスキーはやや埋没してしまった感があった。


II.「葉は色あせて」( The Leaves Are Fading )

振付 = アントニー・チューダー( Antony Tudor )
音楽 = アントニーン・ドヴォロザーク( Antonin Dvorak )

アマンダ・マッケロウ( Amanda McKerrow )
ジョン・ガードナー( John Gardner )

 この夫婦のお得意(?)の演目。
 これを踊る時のマッケロウは、身体の芯からリリカルになっているように見える。普段は彼女のきりりとした顔立ちが気になることがあるのだけれど、不思議にこの演目では気にならない。ガードナーと視線を交わすところでは、優しげな微笑を彼に投げかけ、見ている側まで幸せな気分にさせてもらった。
 ガードナーもとても良かった。

 始まる直前に、アラブ系の巨大なおじさんが私の前の席に座りにきたので、舞台の4分の1が、射撃訓練の標的のような黒い人型シルエットに覆い隠されてしまった。(実は悲惨だった)


III.「ウィズアウト・ワーズ」( Without Words )

振付 = ナッチョ・デュアト( Nacho Duato )
音楽 = フランツ・シューベルト( Franz Schubert )

????
マルチェロ・ゴメス( Marcelo Gomes )

????
ロバート・ヒル( Robert Hill )

アシュリー・タトル( Ashley Tuttle )
ホセ・マニュエル・カレーニョ( Jose Manuel Carre
ño )

スーザン・ジャフィ( Susan Jaffe )
イーサン・スティーフェル( Ethan Stiefel )

 プレイビルには、10月30日と同じメンバーが印刷されていたが、幕が上がる直前にキャスト変更のマイク放送があった。放送は1回きりだったので、結局、二人の女性ダンサーが分からずじまい。

 今回の組も、チームワークが良く、ソロ、デュエットともよくこなれていると思った。
 メットシーズンの「海賊」に引き続き、ヘレーラとタトルを同じ役で見ることになったが、私はやはりタトルの踊りの方が好きだ。彼女の細部まで徹底して気を配る踊り方には、好感が持てる。
 スティーフェルのソロの音楽は、有名な「野なかのばら」。小鹿のように跳ねるところは、やはり同じパートを踊ったマラーホフとよく似ている。(二人して妖精系ですか)
 前回ケントが踊ったパートは、この日ジャフィによって踊られたのだが、よりしっとりとした感じが出ていた。

 休憩中に、巨大なおじさんはどこかに行ってしまって、この演目は障害物なしで見ることができた。その代わり、私の横に座っていた友人マダムNの前に背の高い女の人が座り(ここも空席だった)、今度は彼女が始終頭をうごめかす羽目に。(結局、前の席の女性は次の休憩時間の間に姿を消すことになる。後方の席の人が空いている前方の席に移ってくることはわりとあることだが、本人もどことなく居心地悪く感じるのかも)


IV.「ガラ・パフォーマンス」( Gala Performance )

振付 = アントニー・チューダー( Antony Tudor )
音楽 = セルゲイ・プロコフィエフ( Serge Prokofiev )

ロシア人バレリーナ = アンナ・リセイカ( Anna Liceica )
イタリア人バレリーナ = クリスティーヌ・ダンハム( Christine Dunham )
フランス人バレリーナ = アシュリー・タトル( Ashley Tuttle )

 おなかを抱えて、というほどではなかったが、笑わせてもらった。
 ロシア人バレリーナ役、アンナ・リセイカは、いばりちらして傲慢な態度を取りつつ、難しい技を披露するこの役を見事に果たしていた。また、拍手がまばらになってもしつこく舞台に出て、喝采を浴びようとする場面など、堂々としたコメディエンヌぶり。彼女は、まだコール・ドのメンバーだが、ルドルフ・ヌレエフ国際バレエ・コンクールの入賞者で、これからの活躍が期待できる。
 ダンハムは終始マイペースのイタリア人バレリーナで、超然としており、周囲のことを全く気にしない。一番おもしろかったのだが、顔を能面のように固まらせなくてはいけない(?)ので、辛抱の役かもしれない。(私だったら、観客につられて笑ってしまう)
 イタリア人バレリーナのパートナー役は、ジュゼッペ・ピコーネ。プリマの羽根飾りでむせたり、彼女に冷たくあしらわれて、すねたように袖に下がっていくところなどおもしろかった。
 そして、タトル。彼女に陽気にはしゃぎまくる役ができるのか、と思っていたが、なかなか健闘。投げキスを観客席にふりまきながら、ころころ笑い転げ、ピンクのお人形のような衣装で、ルンルンと踊る。「カーテンコール」では神出鬼没に登場して、パートナー(ホアキン・デ・ルース)を振りまわす。
 群舞(プレイビルによるとコリフェたちとなっているが)のバレリーナたちもプリマに怒られたりしながらも、何とかして目立とうという気持ちを顔に出して踊るのでとても楽しかった。



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