(お断り)登場人物の名前の読みが分からないので、「雪娘」「ミスギル」「クパヴァ」と勝手に読ませて頂きます。( Snegurochkaは、主人公の雪娘の名前? それとも雪娘のことをロシア語でそういうのだろうか?)
一幕のストーリー。雪娘たち(ケントとコール・ド・バレエ)とお父さんのFather Frost(こういうのって和訳しにくいですよね。父なる霜、寒気の精、霜お父さん???)が、森でトナカイたちと遊んでいると、人間がやって来る。その中にミスギルとクパヴァもいる。二人は結婚式を間近にひかえている。(このミスギルは、シーズン開幕前のパンフでは農民ということだったが、実際は貴族の息子という設定だった)
人間達の様子を観ていた雪娘は、ミスギルに恋し、お父さんの止めるのもきかず、彼を追いかけてしまう。
一幕は退屈。ケントの愛らしさでもっているような感じ。
二幕。村で冬祭りが行われている。そこへ現われた雪娘と村人たちは楽しく踊る。ミスギルたちも合流。ミスギルを見つけた雪娘は、彼にさかんにアタックし、婚約者のクパヴァを怒らせる。(この日は二人の結婚式の前日)
ミスギルの気持ちは揺れるが、結局クパヴァとともに立ち去る。悲しむ雪娘が、一人とり残される。
三幕。皇帝の宮殿において、ミスギルとクパヴァの結婚式。華やかな踊りの後、息も絶え絶えの雪娘が現われる。(熱に弱い彼女は、自分自身の恋の炎のために弱まっている)
雪娘の深い愛を悟ったミスギルは、衰えている彼女の姿にうちのめされるが、そのことが花嫁と来賓の機嫌を損ね、家族と友人を残して全員去ってしまう。
春の陽光と彼女自身の恋の熱さのため、雪娘はミスギルの腕の中で溶けてしまう。幕。
ケントは、全く問題がないように感じられた。一幕の好奇心旺盛で純情な雪娘の造形は、とても自然で無理がなかったし、片思いに悩む演技は切なくて共感できる。特に二幕で、ミスギルの胸にそっと顔を寄せるところは、非常にしっとりした情感が流れた。
少し問題だったのは、グラファン。回転もいくつか不安定だったし、音楽にうまくのれていなかったようだ。衣装が、ニッカーボッカーのような民族服のせいもあるのか、ジャンプしていても重たそうだった。
ケントとのリフトで、「今のひょっとして失敗?」と思えるような不格好なのもあったし。(あれで正しかったのなら、ごめんなさいですが)
演技面では、特に不満に思ったことはない。甘いマスクのグラファンは、こういう優柔不断な男の役が、よく似合う。
クパヴァを踊ったタトルは、いつもながら安定した踊り。三幕で、ミスギルとクパヴァの見せ場的踊りがあるのだが、これがなかなか良いです。叙情的で、どこかもの悲しいアダージオに、男女それぞれのソロが続き、「これって古典のグラン・パ・ド・ドウ形式?」と思った途端、最後のコーダがないという肩すかしを食らったのだが、タトルがとても素敵に踊ったので、踊り自体の印象はいい。初めて「ブラーヴォ」の声がかかったのも、ここだった。タトルは、やはりペザントよりこういう役の方が合っている。
振付がいいかどうかは、私には分からない。ただ、ヒロインの雪娘にはあまり技巧的な振付がされておらず、演技の方に比重が置かれているような感じを受けた。
ところで、雪娘はよく座りこんだり、寝転んだりする。私はこの日、大柄なおじさんの後ろに座ってしまい、ケントがしばしば皆既日食状態になって、非常にイライラした。
一幕は白い衣装の雪娘たちの群舞が多く、ロマンチックで女性的、二幕はロシアの民族衣装をまとった若者たちの活気あふれる踊りが多く、男性的で陽気な雰囲気だった。私としては、冗長な一幕と二幕を合わせて、全二幕にしてほしかった。三幕の宮廷シーンは、豪華な衣装もロシアロシアしていて、エキゾチックなムードがたっぷり。ただし、セットは全幕通して貧相。
皇后役で、イリーナ・コルパコワが出演していた。彼女はいまABTでバレエ・ミストレスをやっているが、ロシアものだから出したのでしょうか。ちなみに、踊るシーンは全くなかった。