「白鳥の湖」より第二幕（ Swan Lake，Act II ）
文句なしに笑えた。ここの看板の出し物だけに、この日最も笑いを取っていた。
とてもゴツイ体を持つオデットだが、動きそのものはバレエをきちんと修めた人のもの。バレエの舞台に飢えていた私には、爆笑しながらも渇望感が満たされていくのを感じて、幸せだった。
「グラン・パ・クラシック」（ Grand Pas Classique ）
今年は私にとって、「グラン・パ・クラシック」の当たり年になりそうだ。
開幕直前に、一つだけ未定だった演目を「グラン・パ・クラシック」にするというマイク放送があった。キャストもその時放送されたのみなので、ちょっとあやふやだが、女性パートのオルガ・サポゾーワ（芸名？）は素晴らしかった。
彼女（？）は非常にテクニシャンだし、ポーズも一つ一つがきれい。加えて、スーザン・ジャフィもかくやと思われる艶然たる微笑。
ギャグは数ヶ所しかなく、出だしに女性役が男性をリフトしたのと、男性役がロワイヤルをしている最中に腕時計を見るしぐさをしたのみ。後は、ほとんどすべて真面目に踊っていた。
「ラ・ヴィヴァンディエール」( La Vivandiere )
ハンガリーの村を舞台にした古いバレエより抜粋。
ヒロインは大女のバレリーナ（？）で、恋人役の男性がとても小柄なので、彼らの登場で大笑い。ちょうど小学生とプロ級のバスケ選手といった釣り合い。この男性ダンサーは、私たちがチケット窓口にいた時、すれ違ったのだが、身長１６０センチといったところだった。
しかしながら、この大木のようなバレリーナ（スヴェトラーナ・ロファトキナ）、ジャンプが無茶苦茶軽いのだ。あんなに体が大きいのに、着地の際、ほとんど音がしないのには感心した。
「瀕死の白鳥」（ The Dying Swan ）
音楽が始まる前、スポットライトが焦ったようにバレリーナを探す。そこでまず笑い。音楽が始まってもライトは白鳥を探し当てることができない。ついに、探し当てた瀕死の白鳥は、静々とパ・ド・ブレで出てきているが、衣装から羽根を狂ったように撒き散らしていて、大笑い。後はそれほどおもしろくなかったが、羽根が舞い散る様子は、量さえ加減すれば本物のバレエでも美しい効果が出るのではないか、と思わされた。
「スターズ・アンド・ストライプス・フォーエヴァー」( Stars & Stripes Forever )
ご存知ＮＹＣＢのレパートリーより。
一番私の目を引いたのは、先ほど「グラン・パ・クラシック」を踊ったオルガ・サポゾーワ。ここでも技術の高さを見せてくれた。
そして、全員による華やかなフィナーレ。壁に星条旗の模様がライティングされ、観客は大喜び。国旗にマーチとアメリカ人の好きなものが揃うので、観客も手拍子して、盛り上がることこの上ない。
最後に、ニューヨークで好評だったリバーダンスを一同で披露。アイルランドの民族色たっぷりの音楽が流れるや、口笛まじりのやんやの大喝采。劇場中が大騒ぎの中、幕が降りた。
今日も例にもれず、観客は老人ばっかりだった。中年の人すら少ない。
私の横に座ったおじいさんは、隣が若い（？）アジア人なことにひどく緊張していて、私が少しスカートのしわを直しただけで、「ごめんなさい」と謝ってこられる。（当たってないっちゅうに） 珍しいもの見たさというのか、とてもこちらが気になる様子。夫と私が話す日本語にも興味津津といった感じで、耳がダンボになっているようだった。おかげで、私は身じろぎできず、体を硬直させて、開幕を待ったのでした。
ジョイス・シアターは今回はじめて行ったみたが、想像していたよりとても小さい劇場で、びっくりした。ミュージカルをやるブロードウェイの劇場より小さい。もちろん一階しかない。内壁は赤レンガで、天井はパイプやコードなどが剥き出し。建物の外観も、田舎の映画館といった趣だった。
もともとこのカンパニーは、オフ・オフ・ブロードウェイのレイト・レイト・ショウから始まったらしいから、オリジナルの雰囲気を少しは味わえたのかも。
来年の５月には、シティー・センターで「ロミオとジュリエット」をする予定。見たいけど、その頃はリンカーン・センターのバレエシーズンだし、迷うところです。