第十二回 アメリカで出会った韓国


 日本に帰ってみると、ワールド・カップ共催の影響(?)で、お隣の国、韓国がぐっと身近になっていた。
 日本の芸能界で韓国出身の芸能人(以前は有名どころといえば、演歌歌手しかいなかったものだが)が活躍し、韓国映画やTVドラマが 日本国内で人気を博す。「○○の素」のような物が売られていて、韓国料理が日本の家庭で作りやすくなった。


 アメリカに住んでいた時は、韓国系の人たちと接する機会が非常に多く、地理的には日本にいた時より遠ざかったのに、と不思議な 気持ちになったものだ。
 NYとその周辺で商店を経営する韓国系は多く、ネイル・サロン、デリ、クリーニング店などは、今やかなりの割合を韓国系が 占めているのではないだろうか。
 韓国系スーパーマーケットは、日系の大型スーパーより野菜がきれいだし、全般的に安め。しかも日本の食品も多く揃えているので、 日本人妻たちにも好評だった。

 商売をしている人はアメリカの市民権か永住権を持っているのだろうが、数年滞在型の韓国企業駐在員とその家族も多かった。

 ESLクラス( English as the Second Language =英語を母国語としない人のための英会話教室 )で知り合った韓国の人達は、 大体が企業駐在員の奥さん。戦前の植民地支配のこともあって冷たくされるのでは、という心配もあったが、たまたまか私は 反日的な人には出会わなかった。むしろ、容姿や食べ物、文化面の近しさから、仲良くしてくれる人の方が多かった。
 中には「日本には負けないわよ」といったライバル意識を持っている人もいたけど、日本のお菓子作りの本を持ってきて 「漢字は分かるけど、日本の文字が読めないから訳してくれる?」と言ってくる人もいる。ある人のマニュキュアを誉めると、 次の授業の日、彼女は自宅からそのマニュキュアを持ってきて、私の爪をきれいに塗ってくれたりもした。


 東アジアの伝統が韓国ではまだ色濃く残っていることも、彼女たちとのふれあいで分かったことだ。

 古代、中国の思想・文化・技術等が中国や朝鮮半島から日本に伝わって、千年以上その土壌のもとに日本人が暮らしてきたわけだが、 その多くを近代日本は西欧化の流れで捨て去ってしまった。

 例えば、中国・韓国は夫婦別姓だが、かっては日本もそうだった。
 源頼朝の妻、北条政子は源政子ではないし、浅井長政に嫁いだ織田信長の妹、織田市(お市の方)は、浅井市ではない。柴田市にも ならない。夫婦別姓を認めると日本の伝統的家制度が崩壊すると保守系の政治家は言うが、姓に関してはたかだか明治以後の西洋式伝統だ。

 韓国では旧正月も祝うらしいし、年齢を「かぞえ」で数える習慣もある(あった?)ようだ。この「かぞえ年」のことを、 韓国人の生徒がアメリカ人の先生に、「胎児が母親の胎内で1年近く生きているから、生まれた瞬間に1歳と数えるんですよ」 と説明しているのを聞いて、「なるほど」と合点がいったこともある。(←それまで、考えたことがなかった) 赤ちゃんは、受精から大体 8ヵ月半から9ヶ月ぐらいで生まれるが、確かに、陰暦では十月十日に換算され、1年近くである。

 ある時は、赤ちゃんが生まれた韓国人のご近所さんに「百日のお祝い」に招かれた。
 日本でもその頃お食い初めの儀式をするが、地方によっては「百日の祝い(ももかのいわい)」の名が残っているという。平安時代の 文学作品にも「五十日の祝い(いかのいわい」の記述が見られるので、こういう習慣も昔海を渡ってきたのかなと思う。


 おもしろかったのはテレビ番組。
 昨今はどこの国でも似たような内容の番組があるが、日本とアメリカのは、アイデアが似ていてもテイストがちょっと違う。
 でも、韓国語放送の時間に垣間見た韓国のTV番組は、びっくりするほど日本の番組を彷彿とさせる。
 バラエティ番組や子供番組など、視聴者の嗜好がこうなのだとしたら、やはり欧米よりずっと近い。
 重厚なつくりの連続歴史ドラマは俳優陣・セット・衣装などが豪華で、さしずめNHK大河ドラマのようなものなのだろうなと思い ながら、時々チェックしていた。(←私は歴史ものが大好き)

 ファッションの嗜好ということでは、日本人と同様、韓国の女性もブランド好き。全身に高級品をまとっている韓国マダムたちを よく見かけたものだ。
 旅行者の多いマンハッタン五番街の高級品店には日本人店員がいるが、観光地ではないニュージャージーの支店では韓国系の店員を よく目にするのがそれを物語っている。
 5〜6年前の韓国の経済危機の時は、韓国企業がたくさんの駐在員を本国に戻したので、ニュージャージーにあるフランスの某一流 バッグ・メーカーのお店が売り上げ激減で悲鳴を上げていた。(ちなみに、このメーカーの世界での売り上げの3分の1が日本人客に よるとのこと。日本が滅亡したら、ここは間違いなく倒産だね〜)

 韓国人女性には、美容に手を抜いていない人が多い。「『あなたは韓国人か?』ってアメリカ人に聞かれたら、あなたは美人だと 言われているのよ」と先輩の駐妻は言っていた。
 日本人の駐妻にも同じ傾向が見られるが、韓国の駐妻も本国のファッション雑誌を見て、その流行を研究している。永住組と違って、 数年たったら国に帰るのだから、当然なのだが。
 なので、日本人か韓国人かは、口紅の色とか髪型で分かることもあった。


 雪がたくさん降ると、どこの国の子供も雪だるまを作ってしまうようだ。
 ヨーロッパ系雪だるまは雪玉を三つ使う。そして、人参を突き刺したりしてだるまの鼻にする。
 ところが、韓国人の知人宅の前を通ると、なんと玉が二つの雪だるまが作られていた! 「鼻」も石か何か平べったいものを 「顔面」に埋め込んである。
 雪だるまの作り方も大陸渡来なのか? それとも、単に昔の人が自分たちに似た雪だるまを作っただけなのか? (顔の凹凸といい、 頭と全身のバランスといい、白人とアジア人の身体的特徴の違いがよく分かる)
 ともあれ三つ玉雪だるまの勢力圏内で、日本人以外の人が作った二つ玉雪だるまを見た時は、妙に連帯感を持ってしまったのでした。 (うちの二つ玉もここに連れてこようかしら、と思ったぐらい)


 アメリカに住んでアメリカのことを色々知ることができたけれど、韓国のことも知ることになろうとは行くまで予想だにしなかった。 (まだまだ「知っている」うちには入らないだろうが)
 アメリカは移民の国なので、様々な国や文化を背景とする人たちに会ったが、やはり多くのことが似ていたり、共有していたりで、 韓国コミュニティが群を抜いて私たちの日常生活に近しい存在だった。
 国と国との間柄は難しいことが多いけれど、似ているお隣さん同士、未来志向で仲良くやっていきたいものだとつくづく思う。


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