第五回 車社会に住むということ


 「アメリカは車社会である」
 そんなことは百も承知していましたが、いざ自分が住むとなると、これは大きな問題として、私を悩ませました。

 なぜかというと、私は運転が苦手なのです。はっきり言って、大が3つつくぐらい嫌いです。じゃあ、しなければいいじゃない、で済まないところが、アメリカ車社会の恐いところなのです。(恐いか?)

 もともと、私は自動車に全く興味がない人でした。
 大学生ぐらいになると、自分やBFがどれだけ高い(もしくはカッコいい)車に乗っているか、自慢する方々がいますが、私には全く効果がありませんでした。というのも、私は自動車の判別をする時、色とドアの数ぐらいしか見ていないのです。車種とか、エンジンが何CCあるとか、値段とかにはとても無知でした。
 大学生の時、母が運転する家の車で外出しようとして、他人の車(違う車種だったんだけど、色とドアの数が同じだった)に乗りこんでしまったことがあり、母に呆れられたことがあります。(今でも運転席に座っていた、あの見ず知らずのおじさんの驚愕した顔が忘れられません)

 そんな私ですので、日本では専ら免許を身分証明書として使っていました。
 そして、アメリカにやって来たわけです。これが悲劇第一幕の始まりでした。

 ニューヨークなどの大都会をのぞき、アメリカの町は住民が車を運転することを前提に、つくられています。と、人から聞いたわけではないけれど、実質、車がないと用が足せません。人参一本買えないのです。
 スーパーマーケット、郵便局、銀行、クリーニング屋さん、鉄道駅、バス乗り場、すべてそこまで車で行かないといけないのです。(もちろん、それらの徒歩圏内に住んでいる人もいますが、そういう人は少ないですね)
 これは、車を使うと楽だ〜のレベルではありません。

 去年、日本に帰った時、友人に「車がないと生活できない、って言うけれど、もし最寄のスーパーに歩いていこうとしたら、どれぐらいかかるの?」と聞かれ、うろたえました。「1時間半? いや2時間か? こう行って、こう行って」と頭の中でシュミレーションしましたが、途中であきらめました。
 なぜか? 道がないのです。歩行者用の。散歩道はところどころあるんですが、本当に「ところどころ」なのです。「すべての道はローマに通ず」というのは、半分嘘っぱちです。歩行者はローマどころかスーパーマーケットにすら、行けないのですから。

 運転が恐くない人には、この恐怖はなかなか分かってもらえないかもしれません。
 でも、私の場合、運転中に恐い思いをすると、その感覚や記憶が時たま蘇ってきて、心臓がぷるぷる震えるほどでした。
 さて、そんな私でも、しばらくしたら何とか地道は運転できるようになりました。(ちなみに、こちらの道路は広くて、日本よりは運転しやすいです。こまこました路地もないし、自転車も歩行者もほとんどいませんし)

 ここで、第ニ幕の始まりです。次なる課題は、ハイウェイ。

 アメリカは全国にハイウェイが張り巡らされていて、ほとんど無料。有料道路も日本の感覚からすれば、「これっぽちなら取るなよ」というぐらいの少額。
 自動車旅行をするなら大変便利なんですが、運転が苦手な私にとっては、ハイウェイが生活道路として使われているという事実は恐ろしいことでした。
 何せキロにして時速100キロぐらいの流れの所から、お店の駐車場に出たり入ったりしなければいけないので、どんくさい私には、とても無理なように見えたのです。(でも、杖をついたヨボヨボのおばあさんでも、ハイウェイからスーパーにのりつけるのよね〜)
 ハイウェイを使うと、どこに行くのも大抵最短なんですが、最初のうちは、地道をまわりまわりして買い物に行っていたのでした。ところが、回り道をしても、行ける所はいいです。行けない所があるのです〜。

 うちの最寄のレコード屋さんと本屋さんは、ハイウェイでしか敷地に出入りできないのです。バレエのビデオを探したいばっかりに、私はハイウェイにトライしたのでした。(バレエにはまらなかったら、いまだにそんな勇気は起こらなかったことでしょう)

 近場にはハイウェイを使って行けるようになったものの、私にはいまだに一人で運転していけないところが沢山あります。だからといって、普段は困らないんですけどね。
 でも、ふと夫が誘拐された場合を考えてみました。
 普通、身代金を要求されて、持っていかなければ、犯人は人質を返してくれませんよね。夫がハドソン川のもくずになってしまっては、私も困るので、何とか身代金を持っていきたいのですが、身代金受け渡し場所が大問題です。
 犯人に、
 「いいな、○○にお前一人で持ってくるんだぞ!!」
と、言われても、私の場合、
 「そこは〜、一人では行けませ〜ん」
となり、
 「じゃあ、△△は?」
 「あ〜、そこも、ちょっと〜」
という展開は大いにありえます。もし、犯人がぶちギレたら交渉決裂です。(仕方ないから、100メートル先までリモを使おう)
 運転が覚束ないと、家族の命を救うのも至難の技なのです。


 (これからアメリカに住もうという人が、これを読んで、「アメリカとは、何と不便で恐い所か」と憂鬱になられてはいけませんのでお断りしておきますが、私のように運転嫌いの人は少数派で、大抵の人はすぐ慣れてどこにでも行けるようになりますので、落ち込まないでくださいね)


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