第七回 アメリカでの出産(ドキュメント・陣痛編)



 99年11月に、ニュージャージー州にて長男を出産しました。
 私は今まで風邪ぐらいでしか医師のお世話になったことがなく、入院したこともなかったので、初めてのお産を外国でするというのには一抹の不安もありました。
 が、結果的には、妊娠中トラブルらしきものもなく、素敵な助産婦さんに恵まれ、とても安産で子供を授かったので、案ずるより産むが易しを地でいった感じです。
 日本で出産したことがないので、日米のお産を完璧に比較することはできませんが、「アメリカ見聞録」のトピックとしてはおもしろいのではないかと思い、今回ドキュメントという形で掲載することにしました。(あ、今回は「アメリカ体験録」ですね)
 私の場合、初産にしては規格はずれの安産だったので、その辺をさしひいてお読みくださいね。(普通はもっと辛いみたいです)


1.陣痛始まる

 それは、出産予定日を3日過ぎたある秋の日のことだった。

 明け方、下腹のかすかな異変で目が覚めた。痛いというほどではないが、身体の中から何かが押している感じがする。
 時計を見ると、午前4時45分。外はまだ真っ暗だ。

 心の中に、「いよいよ来たか!?」という思いが浮かんだ。


 予定日の10日ほど前の検診で、すでに子宮口が3センチ開いており、助産婦の永門(ながと)先生に「あまり遠くには外出しないでね」と言われていた私。その検診日以来、ちょっとしたことで「これって陣痛かも」、「お産が始まったのかも」と小心者の私は、びくびくして日々を過ごしていたのだった。

 でも、この早朝の異変には、「これは今までのとちょっと違うぞ」という気持ちがあった。
 そのせいかベッドに戻る気が起こらず、そのまま居間で「ガラスの仮面」最新刊を読み始める。これは、日本からお産の手伝いに来てくれた母に頼んでおいたもの。
 「月影先生がんばるなあ」などと読みすすめながらも、ストーリーがあまり頭に入らない。
 まだ全く痛くないが、内からの圧迫は規則的。ますますあやしい。
 つけてみると、10分間隔に起こっている。

 居間の明かりに気づいて、上の階に寝ていた母が起きてきた。
 「お腹、痛いの?」
 「全然。ちょっと様子見てみるから、まだ寝てて」
 母が部屋に戻り、更に30分。圧迫はなおも10分間隔で起こっている。
 私の中の「もしや」は確信に変った。

 「きっと、これが陣痛だ」

 思い起こせば、春のバレエ・シーズンにはつわり防止のため毎回おにぎりを持参。(幕間に、メットのコーヒー・ショップでおにぎりを食べていた日本人を見かけられた方、それは私です)
 私は「劇場に行くのは全く問題なし」とお墨付きをもらって行ったのだが、結構妊婦がバレエを観にきているのに、自分が妊婦になってから気づいた。(アメリカ人の場合、妊婦に見えるだけの人も結構多いのだが・・・)
 7月のキーロフ・バレエNY公演の時は、わりとお腹も大きくなっていて、「まだバレエ行くの?」と夫に呆れられたものだ。(これでも私はアスィルムラトーワのザレマをあきらめたのだ!)
 「眠りの森の美女」の涙が出そうなぐらい美しい間奏曲を聞いて盛んにお腹の中で動いていた赤ちゃんが(ヴァイオリンのワシリエフさん、ありがとう)、いよいよ出る準備を始めたのだ。

午前6時
 夫を起こす。
 「ついに来たか」と、夫も神妙な面持ち。
 永門先生には、陣痛が10分間隔になったら電話するようにと言われていたのだが、圧迫感だけで全く痛みがないので、とりあえず入院バッグの最終チェックをする。
 夫も母も身支度。

午前6時30分
 永門先生に電話。
 「10分間隔になりました」
 「予定日も過ぎているし、子宮口も3センチ開いていることだし、入院しましょう」と永門先生。
 その時、私の中に「これで入院か・・・」という気持ちがあり、つい「まだあまり痛くないんですけど」と言ってしまった。
 別に、入院したくないというわけではなかったのだが、本当に痛くなかったので、こんな状態で入院するのもなあ・・と思ったのだ。私って、やっぱり変。
でも、この自分の一言を、私はのちのち後悔することになる。

 「あまり痛くないって、どう? 眉間に皺が寄るぐらい?」
 痛みの感じる度合いは人それぞれなので、永門先生は具体的に質問。
 「ぜ〜んぜんです。まだまだ、へっちゃらです」  でも、本当にこれは強がりではなく真実なのだった。
 一旦電話を切る。

 その後、3人で朝食。
 やや痛みが出てくるが、まだまだ軽いもの。痛みがきている間は、箸をやすめたくなる程度。

午前8時30分頃
 永門先生から電話。  「やっぱり入院しましょう」(先生によると、私のような体型はお産が早くすすむらしい。どんな体型か? それはヒ・ミ・ツ)

 その頃には、間隔は5分間隔になっていた。
 食後、天津甘栗を食べていたのだが、陣痛が来ている時は、栗の皮がむけず、じっと深呼吸して痛みが過ぎるのを耐え忍ぶという状態。
 陣痛とはおもしろいもので、5分間隔になると1分だけ辛く、後の4分は何事もない。つまり、栗を食べるなら、後の4分の間にしなくてはならないのだ。

 午前9時45分に病院で、先生とおちあう約束をして、電話を切る。


午前8時45分頃
 私達は、入院支度も朝食も終えていたので、病院が遠いこともあって約束の1時間前に家を出る。
 陣痛が来ている間(1分間)は、ふう〜と深呼吸。
 でも、まだ深呼吸で耐えることができる程度。

 初産なんだから当たり前だが、それまで陣痛未体験だった私は、きっとこれからすごい痛みになるんだろうなと想像するしかない。
 子宮口が4センチ開いたら、鼻の穴が開くほど痛い(つまりゼーハーゼーハーというかヒーハーヒーハーという感じ!?)と聞いていたし、タオルを口にくわえてやってくる妊婦さんもいるらしいし、どうしても壮絶な光景を思い浮かべてしまう。
 こらえ性のない私に、果たして耐えることができるだろうか・・・。

 不安が渦巻いていたが、とりあえず今は楽勝で耐えることができ、スカーフ一枚くわえたいとも思わなかったので、「この分じゃ、まだまだだなあ。生まれるのは今日の午後かな晩かな。晩までもつれこむのはヤだなあ」と思っていた。(初産の場合、陣痛が始まって赤ちゃんが生まれるまで、半日から1日かかるのが普通らしい)

 それに、その時はまだ「これ陣痛じゃないかも」という気持ちもあった。
 「病院でトイレに行ったら直ちゃったってことになったら、恥ずかしいよね〜」と車内で笑いながら、私達は一路病院へ向かったのだった。


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